お問い合わせ | English

佐賀県 モデル自治体

概要

佐賀平野は、軟弱な粘性土地盤で、かつ海抜ゼロメートル地帯です。そのため、洪水や高潮に対して非常に脆弱であり、将来強大な自然災害が発生した場合に甚大な被害を被る可能性があります。
こうした被害の低減のために、佐賀県は台風や洪水等の自然災害被害について佐賀平野を対象に様々なシミュレーションを行い、気候変動に対する適応策を検討します。

主管実施機関

橋本 典明(九州大学)

取り組み

未曾有の洪水・高潮被害を見据えて

九州大学 アジア防災研究センター教授 橋本典明

佐賀平野の大半は海抜0m以下の低平地、強大化する台風の影響で一旦洪水や高潮が発生すれば甚大な被害は免れ得ない。 この様な被害を少しでも減らすためにより詳細なシミュレーションを行っていきたい。

佐賀県 県土づくり本部 河川砂防課技術監 廣松洋一

災害の被害を減らすためにはいつ何をしたら良いか前もって計画を立てることが最重要。災害の規模はもとよりそれがどのように変化していくのか今まで欲しくても得られなかった詳細な情報を基にして、減災に努めたい。

主な成果

平成29年度

①高潮氾濫シミュレーションを用いた様々な適応策の効果把握

前年度までに開発した高潮氾濫シミュレーションを用いて、適応策の効果を把握した。まず、既往最大規模の台風を想定し、複数の台風経路について網羅的に高潮シミュレーションを実施することで、佐賀平野における最悪経路を決定した。次いで、最大規模の台風が最悪経路を通過するという条件のもと、適応策として堤防嵩上げ、旧堤防などの二線堤、排水ポンプ、水門の開閉のタイミングの効果を検討した。これにより、各種適応策の高潮災害に対する減災および復旧効果を把握した。さらに、堤防嵩上げや水門等の複数の適応策の組み合わせについての効果も検討し、複数の適応策を組み合わせることで、一つの適応策のみを実施した場合に比べ、減災効果が向上することを明らかにした。

②破堤根拠となる地盤条件の明確化

河川堤防を対象として地盤情報およびd4PDFデータをダウンスケーリングした将来の河川のハイドログラフを用いて、筑後川の高水位状態における河川堤防の浸透破壊に対する危険箇所を把握するとともに、破堤根拠となる地盤条件を明確化した。

③浸水シミュレーションによる洪水・高潮同時発生時における浸水状況の再現

佐賀県を流れる筑後川流域を対象に流出モデル(集中型および分布型)および洪水氾濫モデルを構築し、d4PDFの将来実験データから抽出した極端降雨による浸水シミュレーションを実施した。下流端境界条件に高潮を想定した水位を与えることで、洪水・高潮同時発生時の浸水状況を再現した。

平成28年度

①高潮氾濫シミュレーションモデルの再現性の検証と高精度化および改良

現地観測結果を用いて、前年度に構築した高潮氾濫シミュレーションモデルの再現性の検証を行った。その結果、観測結果を概ね再現可能であり、モデルの有用性を確認できた。また、高潮氾濫シミュレーションの高精度化として、より地形の再現性を高めるため高解像な計算格子を作成した。さらに、高潮氾濫シミュレーションモデルを、様々な適応策を考慮できるよう改良することで、堤防の設置、排水ポンプによる陸域から海域への海水の排出、堤防の決壊、および水門の開閉が表現可能となった。これら新規にモデルへ導入した機能については、試算を行い妥当性の確認実験を行った。高潮氾濫シミュレーションで検討する適応策についてはモデル自治体である佐賀県と協議し決定した。以上より、次年度以降に行う本格的な高潮氾濫シミュレーションに向けたモデルを整え、適応策等の検討内容を整理した。

②カスケード型洪水制御方式の嘉瀬川への適用

直列配置されたダム群を利用するカスケード型洪水制御方式を佐賀県内の嘉瀬川に適用して、治水適応策としての効果を検証した。

③地形および地盤情報を基にした堤防危険箇所の抽出

地形および地盤情報から堤防危険箇所を抽出することを目的とし、熊本地震を対象として分析を行った。地震時の堤防被災要因を分析した結果、河川流域の微地形や地盤構成と堤防被災との密接な関連性が窺えた。

平成27年度

①モデル自治体が必要とする情報の明確化

モデル自治体である佐賀県および国などの関連機関との協議・情報交換を行い、また技術開発機関・社会実装機関と意見交換を行った。その結果、実効性のある気候変動適応策を検討するためには、従来の浸水想定図の様な情報では不十分であり、洪水や高潮に伴う浸水状況の時・空間的な変動状況など、より高精度で高解像な情報が不可欠であるという認識を確認した。

②必要なデータの収集と数値シミュレーションのための計算環境の整備および試算の実施

平成28年度以降に実施する高潮および洪水シミュレーションのために必要なデータの収集と計算環境の整備を行った。また、数値シミュレーションの境界条件等の検討を行い、幾つかのケースを対象として試算を実施した。

発表論文

平成30年度

①井手喜彦・中尾直幸・児玉充由・橋本典明・山城 賢 (2018).
 海面水温の将来変化パターンによる近未来の台風特性の相違に関する研究
 土木学会論文集(海洋開発)

②井手喜彦・鶴田友莉・山城 賢・橋本典明 (2018).
 佐賀平野における各種高潮対策施設の効果に関する研究
 土木学会論文集(海岸工学) ※査読中

平成29年度

①井手喜彦・山上 澪・山城 賢・橋本典明 (2017).
 経験的台風モデルにより推算された風場の補正法の構築
 土木学会論文集(海洋開発)

②井手喜彦・一色勇志・児玉典明・橋本典明・山城 賢 (2017).
 将来気候データにおける台風中心気圧のバイアス補正手法に関する検討
 土木学会論文集(海岸工学)

平成28年度

①Noriaki Hashimoto, Masaki Yokota, Masaru Yamashiro, Yukihiro Kinashi, Yoshihiko Ide and Mitsuyoshi Kodama (2016).
 Numerical Simulations of Storm-Surge Inundation Along Innermost Coast of Ariake Sea Based on Past Violent Typhoons
 Journal of Disaster Research

②押川英夫,大串浩一郎,杉原裕司,小松利光 (2017).  流水型ダムの洪水制御の簡易解析  土木学会論文集(水工学)

平成27年度

①横田雅紀・中尾直幸・児玉充由・橋本典明・山城 賢 (2016).
 日本周辺における台風来襲特性の将来変化に関する検討
 土木学会論文集(海洋開発)

②山城 賢・百合野晃大・横田雅紀・児玉充由・橋本典明 (2016).
 非構造格子海洋流動モデルによる高潮氾濫シミュレーション
 土木学会論文集(海岸工学)

研究構成

|